『星の村』宇宙堂の旗揚げ公演。アジアのどこかにあったであろう架空の農村と、現代の東京が行き来する。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
主人公は、世田谷の住宅街に独りで住む中年の女教師・星川。彼女は教師として、教育とは何かという壁にぶつかり、異常なほどの責任を感じて職を辞している。また一方ではいびつな都会生活にも疲れている。元来、人好きな星川は親が残した自宅を改装し、人が集まりやすい家にしようと、業者にいろいろ頼み事をするのだが、一年経ってもまだ完成にはいたっていないのだ。そんな星川の心の中にいつも現れるのが、行方不明の兄が残した農村を描いた絵の世界だ。人と人のつながりが確固としてあったその“星の村”に星川は自分の理想を見るのであるが、現実に生きる都市の中では自然と共存して生きるべき人の姿が歪められている。そんな行き詰まりを感じている中年の主人公の再起と渡辺の演劇界への復帰の決意をかさねた意欲作。