公演情報

『夢ノかたち ~私の船~』

祭りの喧騒の中、まるで外界から切り離されたような薄暗い半地下室。そこは学園長の下、生徒たちがミシンを踏み続ける不可思議な洋裁学校

「ドレメ・ドラマ・ドリーム学園」の図書室であった。

生徒たちは仕上がることのない夢のようなドレスをただひたすらに縫い続けているかのようであった。

偶然か必然か、そこへ迷い込んだ青年・田岡と滝沢は、学園長と、その不思議な家族に出会った。

妻・角子は赤い水ヨーヨーに執着し、娘・福子は母親の角子のためにミシンを踏み続け、

息子・縞男は描きあがることのない絵を一心不乱に描き続け、その彼らの関係は、どこか奇妙な不協和を醸し出しているようにも見えた。

田岡が祭りから持ち込んだ赤い水ヨーヨーをきっかけに、学園の一室では不可思議な現象が起こり始めた。

戦争で失ったはずの滝沢の左手が幻として現われ、幻の水ヨーヨーを弾く。

そして、失神から蘇った縞男は人格を変え、神の使者を名乗るのだった。

田岡・滝沢が翻弄される間に、次々と来訪者が現れ、華やかとも、おぞましきとも言える奇怪な空気を残し、嵐のように去って行くのだった。

突如、学園の天窓に鉄格子が降りると賑やかな風景は一変した。人々の精神はしだいに混沌に陥っていく。

突如、結婚パーティが始まり、死んだはずの伝説のデザイナーが現れ、祝福した。

めまぐるしい悪夢のような周囲の現象にとまどう田岡を尻目に、パーティ会場はやがて帆船の甲板に変貌するのだった。

そこで田岡が目にしたのは甲板にたたずむ滝沢と縞男であった。

田岡は、滝沢が「田岡」として語りかける少年「縞男」の名は、自分の少年時代のあだ名であることを思い出した。

錯乱する田岡の前に、中田と角子が現れ、学園は、精神病院としての姿を完全に現すのだった。

中田は、今や国から隔離され、閉鎖された病院に居残り、角子やその他の患者の治療に自らを捧げようとする病院長であった。

角子は、戦時中に「縞男」、「福子」という名前の二人の幼い子供が国の犠牲となることを拒み、自ら殺したという過去を中田に語り始める。

そして、子を持つことに絶望した角子は、日本で戦火に犠牲になった幾多の子供達の屍までをも背負い、

その母であることを請け負っている女性であった。

縞男は苦悩する角子に真の安らぎを与える為、神の名の下に角子を福子に殺害させる。その光景を傍観していた田岡は、

目の前に居る「縞男」が自らを神の使者と信じる別人格の自分である事、つまりは、角子を殺害させたのは自分である事を知るのだった。

死んだ角子の膣からは、夥しい赤い水ヨーヨーがまるでこの世に生きることが叶わなかった胎児の如く流れ出す。

失ったはずの左手が疼き始めた滝沢の周りでは、無数の緑の腕が突き出しては消えていく。

その手が指す人差し指は、人々の行方を指し示しているかのようであった。

幻の学園は、院長と看護婦、紛れ込んだ一人の浮浪児を残し、人々はまた終わりの無い精神の世界に還って行く。

 


私の船

渡辺えり
演出 渡辺えり
キャスト

土屋良太、杉嶋美智子、奥山隆、木村絵里、木村真弓、野笹由紀子、吉田裕貴、                   

梅原晶太多賀健祐、田辺愛美、谷口幸穂、藤太郎、加藤記生、川崎侑芽子、

東澤有香、戸沢俊啓草谷夏枝、加藤亜依、

新井和之(渡辺流演劇塾塾生)梅野渚(渡辺流演劇塾塾生) 、

 

近藤達郎 / 渡辺えり子

 


スタッフ

  照明:宮野和夫 音響:鶴岡泰三 美術:加藤ちか 舞台監督:野口毅 

 振付:菅原鷹志 作曲・演奏:近藤達郎 宣伝美術:JOYS

  企画・製作:()おふぃす3○○宇宙堂