|公演情報
昭和三十九年、東京オリンピックで日本中が沸きかえる頃、山形第六中学の生徒達は横浜へ修学旅行に来ていた。
初めての都会にそれぞれ楽しんでいた皆の前に、生徒の一人「すみれ」の行方不明だったはずの弟「時夫」と、
同じクラスメートの「直助」の死んだはずの飼い猫「ヘプバーン」が現れ、一行はいつしか根岸の外人墓地へと迷い込んでしまっていた。
突如、胸から水色のりぼんを生やした青年“浜野リボン”が地中から現れ、一行は神隠しにあったかのように霧の中へ消えてしまうのだった。
時は変わり現代の横浜。
当時、修学旅行に来ていた生徒の3人、「すみれ」、「百合子」、「桜子」は大人になってからも、あの時煙のように消え、
いまだに行方の知れない他の生徒達の消息を探し、毎年のように同じ場所へ来てしまうのだった。
今、3人は関東大震災後に建てられ、最近取り壊された「同潤会アパート」の同じ住人であった。
彼女らが住むアパートには、シベリアで抑留されていた夫を持つという「春子」、影を背負う謎の老女「馬場」ら、
過去に心の傷を負った女性たちが支え合いながら暮らしていた。
そして、物語は彼女たちがそれぞれに持つ「水色のリボンの記憶」と共に過去へとさかのぼっていく・・・。
一方、欲情すると水色のりぼんを吐くという奇病を持つ青年「潤一」は、母の遺骨を探す旅の途中、横浜で“浜野リボン”と出会う。
リボンは、赤子であった自分の胸に水色のリボンを縫い付け、墓場に捨てた母の消息を求め、
娼婦であった母を知る人物の目に留まるようにと、自らを娼婦の姿に変え、横浜を徘徊している青年であった。
母から体に水色のりぼんを十字架のように背負わされる2人は、その謎を解くために鍵となる「同潤会アパート」へと向かう。
まるで水色のリボンが彼らを引き寄せるように・・・。
青山同潤会アパート。
そこで潤一たちと春子らアパートの住人達は初めて出会い、皆の生い立ちと記憶の謎明らかになってゆく。
住人の一人、「春子」は、「花嫁衣裳の下に水色のりぼんを縫い付けておくと必ず幸福になれる」と義母の「夏江」に言われ、
水色のリボンを受け取ったのであった。しかし、戦後娼婦として働かされたという春子の境遇に逆上した夫に、春子と娘とを見間違えられ、
愛娘を彼女のリボンで絞め殺される過去を持っていた。そして、実は愛娘の死体のお腹から産まれたのが潤一であった。
誰からも祝福されない生命を背負わされるという、まるで双子のような共通の生い立ちを知る潤一と浜野リボン。
生い立ちを知った彼らは、その時初めて“生”を得たのであった。
そんな彼らの前に、いつしかのあの修学旅行の生徒達と時夫とヘプバーンが姿を現した。
そしてすみれ達は、彼らがこの世に生を受けることなく死んでいったあの子供達と、
生きたくても生きられなかった者達の“想い”の姿であったことを知るのだった。
春子の前には亡くなった筈の「夏江」が現れ、水色のリボンが2人を繋いだ。
願いと、悲しみ、苦しみ、絆。青いりぼんは時代を超え、形を変え、生者、死者、全ての人々が懸命に生きようとする想いを繋ぎとめ、
そして未来へ向けてなおも伸び続けてゆくのだった。
作 | 渡辺えり |
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演出 | 渡辺えり |
キャスト | 木野花 田根楽子 宇加地剛士 北村岳子 観世葉子
岡田優 谷口幸穂
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スタッフ | 作曲・演奏:近藤達郎 振付:菅原鷹志 美術・衣装・小道具デザイン:加藤ちか 照明:宮野和夫 音響:実吉英一 ヘアメイク:馮啓考 歌唱指導:深沢敦 演出助手:小笠原響 舞台監督:榎太郎 制作助手:斎藤一樹 企画・製作:(有)おふぃす3○○
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